私が小規模多機能で勤務していた時のお話です。
50代・独身の息子様と二人暮らしのお母さんが利用されていました。
意思の疎通はやや困難でしたが、歩行は問題はありませんでした。
しかし、入浴拒否やトイレ拒否が強い方でした。
食事も他者の食事に手を出したりと、常に見守りが必要な方でした。
家でもとても大変であったと思います。
時々泊りサービスを利用されていましたが、
80~90代の女性は若い頃にお勤めされていた方も少ないため、
年金も少なく、
サービスを多く利用する事は金銭的にも厳しいです。
息子様は仕事をしながら、
歩く事ができる要介護5の認知症のお母さんを
介護するのは本当に大変であったと思います。
しかし、息子様はお母さんが大好きで、
認知症のお母さんを決して怒ったりはしませんでした。
息子さんは
「お母ちゃんは一生懸命生きすぎて
疲れちゃったんだよな」といつも声を
かけていらっしゃいました。
ある日、お母さんの食欲がありませんでした。
いつも食欲旺盛で、他人様の食事にも手を出す方でした。
食欲だけがありませんでした。
すると次の朝、息子さんから
「母が亡くなりました」と連絡がありました。
「え!?」
1日食欲がなかっただけで、
行動はいつもと変わらなかったのに・・・。
死因は「腸閉塞」でした。
だから食べられなかったようです。
その方は、自分の気持ちや痛みを表現できない重度の
認知症でした。
お母さんの突然の死を
息子さんはなかなか受け入れられない様子でした。
お母さんが亡くなってから1か月後、
偶然スーパーで息子さんに会いました。
すると
「実は仕事を辞めたんです。な~んか、あんなに手のかかった母がいなくて
自分はもぬけの殻になっちまいました」
と言われていました。
お母さんの介護が息子さんの日々、心を占めていたんですね・・・。
ずっと勤めていた会社。
勤め上げれば退職金もしっかりあるでしょうし、
昇給、昇格もしたでしょう。
しかし、
お母さんの死によって
全部捨ててしまったそうです。